「闘武祭・開幕」 ◆ 祭の朝 港の沖合—— 海の上に、巨大な建造物が浮かんでいた。 「すごい……!」 グラニは——目を見開いた。 円形の闘技場。直径百メートルはあるだろう。 石造りのような外観——だが、魔法で作られたものだ。 そして——四つ角には、巨大な岩の巨人が立っていた。 その腕が——闘技場を支えている。 「岩の……巨人が……闘技場を持ってる……!?」 グラニは——言葉を失った。 「先生とファーニアの魔法使いたちが協力したんだよ〜」 グリーンが——隣にいた。 「あの巨人も、先生が作ったんだ〜」 港からは——木製の桟橋が闘技場まで伸びていた。 観客たちが——続々と渡っていく。 ◆ 闘技場の中 グラニは——闘技場の中に入った。 観客席が——ぐるりと取り囲んでいる。 冒険者、商人、島民たち——すでに多くの人が座っていた。 「グラニ! こっちこっち!」 フェズが——手を振っていた。 グラニは——フェズの隣に座った。チーも——一緒だった。 「すごい人がたくさんいますわね……!」 「どんな戦いが見られるのかしら……楽しみですわ!」 「うん! ボクも!」 ◆ 観客席の熱気 観客席は——すでに盛り上がっていた。 「今日の優勝予想は誰だ!?」 「ボルガ・フレイムだろ!」 「いや、ゴルド・ルーンだ!」 「ゼロス・ヴォイドの魔法はやばいって聞いたぞ!」 あちこちで——賭けが行われている。 ドロップライトのエマが——観客席を回っていた。 「はいはい、賭けは受け付けてるよ! ただし自己責任!」 ◆ 装備貸出ブース 闘技場の入り口付近には——いくつかのブースが並んでいた。 「いらっしゃい! 双極島の鍛冶屋ヘルグだ!」 「島の素材で作った武器だ! 軽くて強い!」 隣のブースでは—— 「イグナの鍛冶師イグロ・アッシュだ。溶岩鉄の武器が欲しければ、こちらへ」 「重さこそ力だ。見ていろ——今日の試合で証明してやる」 魔法使い向けのブースでは—— ファーが——様々な杖や魔道具を並べていた。 「魔法使いの皆さ〜ん、何でもあるよ〜」 奥には——グリーンのコレクションも展示されていた。 過去の挑戦者が残した遺物。島で発掘された古い武器。 一人の冒険者が——古びた大剣を手に取った。 「『不落の大剣』だよ〜。片腕でも扱えるように作られた英雄の遺品〜」 ◆ グリーンの開会宣言 正午—— 闘技場の中央に——グリーンが立った。 「皆さ〜ん! お待たせしました〜!」 歓声が上がる。 「双極闘武祭、開幕です〜!」 「おおおおお!!」 「ルールを説明するぞ〜!」 「まず——チーム戦だ〜! 1チーム2〜5人で戦う〜!」 「そして——大事なルールがある〜!」 グリーンが——指を立てた。 「自分の武器や魔道具は使用禁止だ〜!」 「「「ええ!?」」」 「全員、島で用意した装備を使ってもらう〜!」 「同じ条件で戦ってこそ——真の実力が分かるってもんだ〜!」 「予選リーグを勝ち抜いたチームが、本戦トーナメントに進む〜!」 「優勝チームには——『伝説への挑戦権』が与えられる〜!」 「なんだそれ!?」 「詳しくは優勝してからのお楽しみだ〜!」 ◆ チーム発表 「さて——ここからが本題だ〜!」 グリーンは——大きな箱を取り出した。 「チームは——くじ引きで決まる〜!」 「「「えええええ!?」」」 「連携できるかどうかも——実力のうちだからね〜」 くじ引きが——始まった。 「チーム1——ゴルド・ルーンとレクト・マーシン!」 「「「ええええええ!!!」」」 観客席が——爆発した。 「あの二人が同じチーム!? 昨日対峙してたのに!?」 他にも——意外な組み合わせが次々と発表された。 「チーム3——リーシア、オーガ・クラッシュ!」 ファーニアの魔法学生と、イグナの武闘派若手。 「チーム5——ヴォルグ・ハウル、マルク、ニナ!」 「チーム6——リラ・サントス、カルト・ゼイン!」 「チーム7——ゼロス・ヴォイド、ヴェル・エクリプス!」 魔神派の重鎮と若きエリート——最強の魔法コンビだ。 「チーム4——ツインボーン!」 ◆ 予選開始 「それでは——予選リーグ、開始〜!」 グリーンの宣言で——試合が始まった。 ◆ 第一試合:ボルガ・フレイム vs チーム15 「第一試合! チーム2 vs チーム15!」 ヘイタが——実況席で叫んだ。 「チーム2は——ボルガ・フレイム率いる三人組!」 「武神派の幹部、『炎の拳』の異名を持つ男!」 闘技場に——巨大な影が立った。 体高2メートルを超える赤い肌。体表に——炎のような亀裂が走っている。 ボルガ・フレイム。 その両腕には——『火山の腕甲』が装着されていた。 溶岩で鍛えられた——イグロ・アッシュの特製品だ。 「あれは——『火山の腕甲』ですわね」 解説席の先生が——マイクを取った。 「イグロ・アッシュ作の傑作。溶岩鉄で鍛えられたこの籠手は——装着者の闘気を炎に変換しますの」 「武神派のような闘気の強い者にとっては——まさに理想の武器ですわ」 「対するチーム15は——四人のモブ冒険者チーム!」 相手チームは——明らかに緊張していた。 「始め!」 ゴングが鳴った。 チーム15が——一斉に動いた。四方からボルガを囲む。 「正しい判断だな。だが——遅い」 一歩——たった一歩で——地面が揺れた。 『火山の腕甲』が——赤く発光する。 右翼の剣士が——斬りかかった。 だが——ボルガは振り向きもしなかった。 「——炎壁」 炎の壁が噴き出し、剣士は後退を余儀なくされた。 「今だ! 背後から——」 槍使いが——ボルガの背中に突進する。 しかし——ボルガは後ろ手で槍を掴み、握りつぶした。 「——終わりだ」 『火山の腕甲』から——炎の塊が放たれる。 「——炎拳・噴火」 一撃で——三人が吹き飛んだ。 残ったリーダーだけが——震える足で立ち上がった。 「まだ……まだだ……!」 ボルガは——その姿を見て、わずかに目を細めた。 「——気概はある。だが——実力が足りん」 最後の一撃は——素手だった。格の違いを見せつけるように。 「——チーム2、勝利〜!」 闘技場が——沸き立った。 ◆ グラニたちの反応 グラニは——言葉を失っていた。 「す……すごい……あれが……本物の戦士……」 フェズは——静かに分析していた。 「しかも——あの人、まだ本気じゃなかった」 「最後の一人——わざと炎を使わなかった。認めたんだと思う」 グラニは——もう一度、闘技場を見た。 (いつか——あんな風に強くなれるのかな……) ◆ 第二試合:リーシア&オーガ vs チーム11 「続いて第二試合! チーム3!」 リーシアは——『氷華の杖』を持っていた。 オーガは——『灼熱の籠手』を装着していた。 「氷と炎……正反対だな……」 「足を引っ張るなよ、魔法使い」 「そっちこそ」 「始め!」 最初は——連携が噛み合わなかった。 「俺が先に——」 「待ちなさい!」 オーガは——リーシアを無視して突っ込んだ。 だが——リーシアは冷静に魔法で援護した。 「——氷結」 敵の足元が——凍りつく。 「今よ!」 「分かってる!」 オーガの拳が炸裂した。 戦いの中で——二人は少しずつ連携を覚えていった。 最後の一人を——同時に攻撃した。 「——氷槍!」 「——炎拳!」 氷と炎が——交差する。 「チーム3、勝利〜!」 リーシアとオーガは——顔を見合わせた。 「……まあ、悪くなかったわ」 「……ああ」 ◆ 午後の試合ダイジェスト 午後も——試合は続いた。 「チーム5——ヴォルグ・ハウル、勝利!」 ステリアの部族長が——豪快に敵を薙ぎ払った。 「チーム6——リラ&カルト、勝利!」 「チーム8——ヴェル・エクリプス、勝利!」 魔神派の若きエリートが——闇の魔法で敵を飲み込んだ。 観客席では—— 「ヴェル・エクリプス……やばかったな……」 「あの闇の魔法——防ぎようがないぞ……」 ◆ 夕暮れ——本日最後の試合へ 夕陽が——海を染め始めた。 「さあ——本日最後の試合です!」 ヘイタが——声を張り上げた。 「チーム1! 因縁の共闘!」 闘技場に——二人の男が歩いてきた。 片腕の老戦士——ゴルド・ルーン。「伝説の帰還者」。 その手には——『不落の大剣』。 「おや——あの大剣を選びましたのね」 先生が——目を細めた。 「『不落の大剣』——伝説の英雄が使ったとされる遺品ですわ」 「片腕でも扱えるように、重心が特殊な位置に設計されていますの」 「そして——一度振り下ろすと止まらない『不落』の特性」 「ゴルド・ルーン様にぴったりですわね」 白髪の魔法使い——レクト・マーシン。ファーニア魔導研究院の高官。 その手には——『月読みの杖』。 「そして——対するは! チーム7! 魔神派の最強コンビ!」 ゼロス・ヴォイド。「緑の賢者」。その手には——『虚空の杖』。 ヴェル・エクリプス。魔神派の期待の星。その手には——『日蝕の杖』。 「ゴルド&レクト vs ゼロス&ヴェル!」 観客席が——爆発した。 「魔神派の最強コンビだと……!?」 ◆ 因縁の対峙 四人が——向かい合った。 「……面白い組み合わせだ」 ゼロスが——静かに言った。 「ステリアの伝説と、ファーニアの高官。犬猿の仲だと聞いている」 「——黙れ。誰と組もうが、俺は負けん」 ゴルドが——睨んだ。 だが——ゴルドとレクトの間には、明らかな距離があった。 「始め!」 ゴングが——鳴り響いた。 ◆ 激突——重鎮対決 ゼロスが——最初に動いた。 「——虚無」 『虚空の杖』から——黒い霧が放たれる。 レクトは——冷静に杖を構えた。 「——月光の盾」 銀色の光が——虚無を防いだ。 「こいつは……予想以上だな」 レクトが——初めて表情を変えた。 「存在しない魔法——対処が難しい」 「さすがにファーニアの高官だ」 ゼロスも——認めた。 二人の魔法が——ぶつかり合う。 「——星の矢」 銀色の矢が——無数に放たれる。 「——虚空」 矢が——虚無の中に吸い込まれた。 「私の虚無は——存在するものを消す」 ◆ 激突——新旧の武 同時に——ゴルドとヴェルがぶつかっていた。 「おおおおお!!」 ゴルドが——『不落の大剣』を振り下ろす。 片腕だけで——その巨大な剣を軽々と扱う。 ヴェルは——魔神派の闘魔法で対抗した。 「——闇の鎧」 黒い光が——ヴェルの体を覆う。 ゴルドの剣が——闇の鎧を打つ。重い衝撃が——闘技場に響いた。 だが——ヴェルは、その場に踏みとどまった。 「やるな、若者。魔法使いが——剣を受け止めるとは」 「私は魔神派です。魔法だけでなく——体も鍛えている」 「だが——まだ足りん」 ゴルドの目が——鋭くなった。 「俺は——いつの時も強者を倒してきた」 連撃が——ヴェルを襲う。闘気が削られていく。 ◆ 混戦——入れ替え 突然——流れが変わった。 「——ヴェル。入れ替えだ」 ゼロスが——呼んだ。 ヴェルが——レクトに向かった。ゼロスが——ゴルドに向かった。 「入れ替えた……!?」 観客席が——ざわめいた。 「魔法使い vs 体術……! 剣士 vs 魔法……!」 ◆ レクト vs ヴェル 『日蝕の杖』から——闇の刃が伸びた。 「私は魔神派——遠距離も近距離もこなせます」 「だが——私も、ただの魔法使いではない」 レクトの周囲に——無数の光球が浮かんだ。 「——星辰の舞」 光球が——ヴェルに向かって殺到した。 ◆ ゴルド vs ゼロス 「剣士と魔法使い——お前は——どう戦う?」 「——斬るだけだ。魔法だろうが——斬れないものはない」 ゼロスの『虚空の杖』が——闇を放つ。 「——虚無の海」 黒い霧が——ゴルドを包み込もうとする。 だが——ゴルドは——前に進んだ。虚無の中を——突き進む。 「なっ……! 虚無の中を——進んでいる……!?」 「俺は——双極島の深奥に足を踏み入れた男だ」 「お前の虚無など——あの場所に比べれば、生ぬるい」 ◆ 拮抗 四人の戦いは——激化していた。 どちらも一歩も引かない。 「すごい……四人とも——本当に強い……」 グラニは——息を呑んでいた。 「でも——あの二人、まだ連携してない」 フェズが——気づいた。 「ゴルドさんとレクトさん——別々に戦ってる」 「対して魔神派は——入れ替えで連携してる……」 「このままだと——負けるわ……」 ◆ 転機 「——覚悟」 ゼロスが——『虚空の杖』を高く掲げた。 「我が奥義——見せてやろう」 黒い霧が——闘技場全体を覆い始めた。 「虚無の淵——」 観客席からも——見えなくなる。 「な、何も見えない……!」 闇の中——ゴルドとレクトは——視界を奪われていた。 「——ちっ。見えん……」 「私も——同じだ」 二人は——初めて、言葉を交わした。 「……老いぼれ」 「……何だ、片腕」 「——吹き飛ばせ」 「……フン。仕方あるまい」 二人が——背中を合わせた。 「あの二人が……!」 グリーンが——観客席で笑った。 「やっと——仲良くなったかな〜」 ——次回へ続く