「闘武祭・予選」 ◆ バルモラの大商人 港町の高級宿—— 窓から、遠くの闘技場が見える。 歓声が——海を渡って聞こえてきた。 「おおおおお!!」 「すごい……!」 バルモラの大商人——オールバックの黒髪に、金の装飾品。 彼は——ワインを片手に、その歓声を聞いていた。 「……賑わっているな」 従者が——傍らに控えていた。 「商人様。闘武祭をご覧になりますか?」 「いや」 大商人は——首を振った。 「私の興味は——別の所にある」 彼は——テーブルの書類を見た。 参加者のリスト。 そして——島の地図。 「この島は——金と秘密のにおいがするな」 大商人は——にやりと笑った。 「なにやら優秀なずるいやつがいるな」 「すべてが——ビジネスになっている」 大商人は——立ち上がった。 「だが——私も負けてはいられん」 「この島——双極島には秘密のにおいがするな」 「武器、魔道具、そして……人材、集まりすぎている」 彼の目が——鋭く光った。 「我々バルモラ——商人の出番かもな」 ◆ 闘技場——虚無の中 闘技場は——黒い霧に包まれていた。 ゼロス・ヴォイドの奥義——『虚無の淵』。 観客席からは——何も見えない。 「見えない……!」 「どうなってるんだ……!?」 だが——グラニは、必死に目を凝らしていた。 (あの中で……何が起きてる……?) ◆ 闇の中の共闘 黒い霧の中—— ゴルドとレクトは——背中を合わせていた。 「……つちぼこりか」 ゴルドが——低く言った。 「小癪な……ただの煙だ」 レクトが——答えた。 「虚無とはさぞかし——偉そうな」 「俺が終わらせてやろう——気配は分かる」 ゴルドが——剣を構えた。 「両腕があった貴様ならもう終わっていただろう」 「愚問だな」 レクトが——杖を構えた。 「まぁよい。教育的指導の時間だ」 「……フン」 ゴルドが——笑った。 「そうだな。若いやつに教えが必要だ」 虚無の中を——何かが近づいてくる。 「——来るぞ」 ゴルドが——剣を構え直した。 「切り刻んでやろう——」 「ねじ伏せてやろう——」 二人は——初めて、連携した。 ◆ 虚無を切り裂く ゼロスとヴェルが——闇の中を移動していた。 「先生。この霧の中では——我々が有利です」 ヴェルが——自信を持って言った。 「あの二人、連携できるはずがない」 「——油断するな」 ゼロスが——静かに言った。 「何か——変わった」 「変わった……?」 その時—— 「——見えた」 レクトの声が——響いた。 「——月光・照破」 銀色の光が——虚無の霧を切り裂いた。 「なっ……!?」 ゼロスが——驚いた。 「私の虚無を——照らし出した……!?」 「虚無は——闇ではない」 レクトが——杖を掲げた。 「存在しないものを——照らすことはできない」 「だが——お前自身は、存在している」 「お前の魔力の流れを——追えばいい」 月の光が——ゼロスとヴェルの位置を浮かび上がらせた。 「——今だ」 ゴルドが——踏み込んだ。 「——『落陽の一刀』!」 片腕の——渾身の一撃。 『不落の大剣』が——空を裂いた。 「ぐっ……!」 ヴェルが——吹き飛ばされた。 闇の鎧では——防ぎきれなかった。 「戦闘不能! ヴェル・エクリプス、脱落!」 ヘイタの声が——響いた。 観客席が——揺れた。 「見えた……! 今のが見えたぞ……!」 「ゴルドが——ヴェルを斬り飛ばした……!」 「あの二人——連携してる……!?」 ◆ 重鎮対決——決着 虚無の霧が——薄れていく。 ゼロスは——一人、立っていた。 「……見事だ」 彼は——静かに言った。 「まさか——あの二人が連携するとは」 「私の奥義を——破られるとは思わなかった」 「負けは認めん」 ゴルドが——剣を構えた。 「まだ——終わっていないぞ」 「ああ」 ゼロスも——杖を構えた。 「——最後まで、戦おう」 残りは——三人。 ゴルド、レクト、そしてゼロス。 「——虚空の刃」 ゼロスが——杖を振った。 黒い刃が——二人に向かって放たれる。 「——月光の盾!」 レクトが——防壁を張った。 黒い刃が——銀色の盾に激突する。 衝撃で——レクトが後退した。 「——ぐっ……!」 「流石に——堪えるな」 その隙に—— ゴルドが——ゼロスに迫っていた。 「——終わりだ」 『不落の大剣』が——振り下ろされる。 ゼロスは——杖で防御しようとした。 だが—— 「——『不落』」 ゴルドの剣が——重くなった。 伝説の英雄の剣——その真の力。 「——一度振り下ろせば、止まらない」 杖が——砕けた。 「——っ!!」 ゼロスが——吹き飛ばされた。 「チーム1——勝利!!」 闘技場が——爆発した。 ◆ 歓喜と称賛 「おおおおおお!!!」 「すげえ……!!」 「あの二人——連携した……!!」 「伝説の帰還者と——ファーニアの高官が……!」 観客席は——興奮に包まれていた。 グラニも——立ち上がって叫んでいた。 「すごい……! すごかった……!」 「最初は——バラバラだったのに……!」 「戦いの中で——認め合った……!」 チーも——拍手していた。 「素晴らしい試合でしたわ……!」 「あの重鎮たち——本当に強い……!」 フェズは——目を輝かせていた。 「あれが——本当の連携か……すごいな……」 ◆ 敗者の矜持 控え室—— ゼロス・ヴォイドが——座っていた。 ヴェル・エクリプスは——傍らで頭を下げていた。 「申し訳ありません、先生……」 「——謝るな」 ゼロスが——静かに言った。 「負けは負けだ。それだけのこと」 「しかし——私が先に倒されなければ……」 「いや」 ゼロスが——首を振った。 「あの二人は——強かった」 「連携していなくても——互いの実力を信じていた」 「私たちに足りなかったのは——その信頼だ」 「……先生……」 「次の機会を待て、ヴェル」 ゼロスが——立ち上がった。 「敗北は——学びの機会だ」 「この経験を——糧にすればいい」 ◆ 二日目——ツインボーン 朝—— 闘技場は——再び熱気に包まれていた。 「さあ——二日目だ〜!」 グリーンが——宣言した。 「今日は——残りの予選と、本戦トーナメントの発表!」 「昨日の熱戦を超える——新たな伝説が生まれるかな〜?」 ◆ ツインボーンの試合 「注目の一戦! チーム4——ツインボーン!」 ヘイタが——叫んだ。 白銀の髪、青紫がかった肌。 異色の瞳。 レインとシエルが——闘技場に立った。 二人は——手を繋いでいた。 「……行こう」 「……うん」 言葉が——少ない。 だが——完璧に息が合っている。 レインが持つのは——『影喰いの短刀』。 黒い刃が——怪しく光っている。 シエルが持つのは——『風読みの杖』。 透明な水晶が——風を纏っている。 「おや——あの二つを選びましたのね」 先生が——興味深そうに呟いた。 「どちらも古い遺物——影と風を操る道具ですわ」 「目に見えないものを操る二人には——ぴったりの選択ですわね」 「対するは——チーム18! 五人のモブ冒険者チーム!」 「始め!」 ゴングが鳴った。 五人が——一斉に動いた。 「囲め! 二人だ! 数の優位を——」 だが—— レインの姿が——消えた。 「な……!?」 「どこだ……!?」 「——後ろ」 声がした。 振り返ると——レインがいた。 『影喰いの短刀』が——黒い光を放っている。 「『影喰い』の能力ですわ……!」 解説席の先生が——説明した。 「あの短刀——影に潜り、影から出現できますの……!」 「なんて厄介な……!」 レインの短刀が——閃いた。 一撃で——二人を斬り伏せた。 「戦闘不能! 二名脱落!」 「くっ——散開しろ!」 残りの三人が——距離を取った。 「影を使うなら——明るい場所で——」 「甘い」 レインが——呟いた。 「人間は——どこにでも影を持っている」 レインの体が——揺らいだ。 そして——敵の足元から、突き出るように現れた。 「なっ——俺の影から——!」 「終わり」 『影喰いの短刀』が——敵の喉元に突きつけられる。 「戦闘不能!」 「残り二人……!」 だが——その二人も、すでにシエルに捕らえられていた。 「——『風の檻』」 風の壁が——敵を閉じ込めている。 「動けない……!」 「——終わりにしよう」 レインが——シエルの隣に立った。 二人は——顔を見合わせた。 言葉はない。 だが——同時に動いた。 レインの体が——影に沈み込む。 同時に——シエルの杖から、鋭い風の刃が放たれた。 風が敵を切り裂く——その一瞬。 影から飛び出したレインが——残る敵にトドメを刺した。 「チーム4、勝利〜!」 観客席が——爆発した。 「すげえ……!」 「完璧な連携……!」 「言葉を交わさずに——あそこまで……!」 ◆ グラニの感嘆 「あの二人……すごい……」 グラニは——目を見開いていた。 「言葉なしで——完璧に動いてる……」 「ツインボーンは——心が繋がっているからですわ」 チーが——説明した。 「同じ種族同士——意思が通じ合うと聞きましたわ」 「すごいな……言葉なしであそこまで……」 グラニが——呟いた。 「強いね……本当に」 フェズも——頷いた。 ◆ 予選総括——ヘイタと先生 予選の全試合が——終了した。 「さあ——予選が終わりました〜!」 ヘイタが——マイクを握りしめた。 「まずは昨日の第一試合! ボルガ・フレイムの圧倒的な——」 「ヘイタくん。『圧倒的な力』だけでは物足りませんわね」 先生が——口を挟んだ。 「え、えーと……『火山の腕甲』を使って、闘気を炎に……」 「よく覚えていますわね。合格ですわ」 「あ、ありがとうございます……!」 「続いてゴルド&レクト vs ゼロス&ヴェル!」 「犬猿の仲の二人が——背中を預け合った瞬間! 今年のベストシーンでしょう!」 「ふふっ、なかなか良い実況ですわね」 「本当ですか!?」 「ええ。ヘイタくんは素直で可愛らしいですわ」 先生が——ヘイタの顔を覗き込んだ。 「ちょ、ちょっと近い……!」 「あら、そう?」 先生の足が——ヘイタの膝に乗せられた。 「ちょちょちょ!!! 先生足のせてこなっ……!」 「私の弟子にしたいくらい。毎日——私の部屋で——二人きりで——」 「に、二人きり……!?」 ヘイタの顔が——真っ赤になった。 「ふふっ、冗談ですわ。……半分は」 観客席から——笑い声と野次が飛んだ。 「ヘイタ! 顔真っ赤だぞ!」 「せ、先生……! 実況に戻りましょう……!」 先生は——まだ楽しそうに笑っていた。 グラニたちは—— 「……」 「……」 「……」 三人とも——下を向いて、無言だった。 顔が——真っ赤になっている。 大人の世界を——垣間見てしまった。 「……な、なんか……」 グラニが——やっと口を開いた。 「……大人の女性………」 「……ええ……」 チーも——耳まで赤かった。 フェズは——何も言えなかった。 ◆ 予選結果発表 「それでは——予選結果を発表する〜!」 グリーンが——叫んだ。 「本戦進出チームは——8チーム!」 大きなボードに——チーム名が表示された。 ・チーム1:ゴルド&レクト → 本戦進出! ・チーム2:ボルガ・フレイム → 本戦進出! ・チーム3:リーシア&オーガ → 本戦進出! ・チーム4:ツインボーン → 本戦進出! ・チーム5:ヴォルグ&学生 → 本戦進出! ・チーム7:ゼロス&ヴェル → 敗退 ・チーム6:リラ&カルト → 敗退 ・チーム8:ヴェル・エクリプス → 本戦進出!(別試合で予選通過) ※ヴェル・エクリプスは別の予選試合で勝利し、個人として本戦進出。 「敗退したチームもあるが——皆、よく戦った〜!」 ◆ 本戦トーナメント発表 「そして——本戦トーナメントの組み合わせだ〜!」 ボードに——トーナメント表が表示された。 【1回戦】 A:チーム1(ゴルド&レクト) vs チーム3(リーシア&オーガ) B:チーム2(ボルガ) vs チーム5(ヴォルグ) C:チーム4(ツインボーン) vs ヴェル・エクリプス D:モブチーム vs モブチーム 観客席が——ざわめいた。 「ゴルド&レクト vs リーシア&オーガ!?」 「古豪 vs 若者か……!」 「ボルガ vs ヴォルグも——武神派 vs 部族長!」 「ツインボーン vs ヴェル——完璧な連携 vs 闇の魔法……!」 グラニは——興奮していた。 「すごい組み合わせ……!」 「どれも見逃せないね!」 フェズも——目を輝かせていた。 ◆ 夜——ビッグイーター 港町のレストラン——ビッグイーター。 店は——大盛況だった。 「はいはい、お待たせ〜!」 ユキナが——料理を運んでいた。 「今日の特別メニュー——闘武祭スペシャル!」 「島で取れた新鮮な魚と、イグナから輸入した香辛料のコラボよ〜!」 グラニたちも——テーブルについていた。 グラニは——目を輝かせていた。 「今日の試合、すごかったね……」 「うん!」 チーも——頷いた。 フェズは——ユキナの手伝いをしながら、料理を運んでいた。 ヘイタも——店に来ていた。 「お疲れ、ヘイタ! 今日の実況、良かったよ!」 冒険者たちが——声をかけた。 「あ、ありがとうございます……」 ヘイタは——まだ顔が赤かった。 その時—— 「ねえヘイタ!」 フェズが——大きな声で呼びかけた。 店内が——静まった。 「先生とあの後——どうなったの!?」 「「「おおおおお!!!」」」 店内が——爆発した。 「それ俺も聞きたい!」 「二人きりで勉強って——マジなのか!?」 「先生——綺麗だったよなぁ……!」 「透き通るほどいい女だ! あの美貌! あの色気!」 「足乗せてきてたぞ! あれ絶対——!」 冒険者たちが——次々と叫んだ。 「ちょ、ちょっと待ってください……!」 ヘイタが——慌てた。 「何もないですから……! 先生は冗談で——」 「冗談じゃなかったらどうなってたんだ!?」 「教えてくれよ!」 「妄想が止まらねえ……!」 ヘイタの顔が——どんどん赤くなっていく。 「あ、あの……僕は……先生は……その……」 限界だった。 「……っ!」 鼻を押さえて——その場に倒れ込んだ。 鼻血だった。 「あはははは!!」 ユキナが——大笑いしていた。 「ヘイタくん、ノックアウト〜!」 グラニとチーは—— 「……」 「……」 また顔が——真っ赤になっていた。 「大人の世界って……すごい……」 グラニが——俯いた。 チーも——耳まで赤くなって、紅茶のカップで顔を隠した。 フェズは——ユキナの隣でニヤニヤしていた。 「ごめんねヘイタ。でも——聞きたかったんだ」 「フェズ……お前……!」 ヘイタが——恨めしそうに睨んだ。 「あはは、仲良しだね〜!」 ユキナは——まだ笑っていた。 ◆ ドロップライト——賭けの結果 酒場のドロップライトも——大賑わいだった。 「大穴で儲けたのは——ゴルド&レクトに賭けた人たち!」 「うおおおお!!」 「ゼロス&ヴェルに賭けた人たち——残念でした〜」 「くそ……! 金が……!」 リラとカルトは——静かに酒を飲んでいた。 「次こそは——勝つ」 「ああ——必ずだ」 二人は——グラスをぶつけ合った。 ◆ 本戦の朝 翌朝—— 太陽が——海の向こうから昇ってきた。 グラニは——港の桟橋に立っていた。 闘技場が——朝日に照らされて輝いている。 (今日から——本戦が始まる) もっとすごい戦いが——見られる。 もっと強い人たちが——ぶつかり合う。 グラニは——拳を握った。 (いつか——あの舞台に立ちたい) 「グラニ〜! 早く来なよ〜!」 フェズの声が——聞こえた。 「今日は席取り競争だよ〜!」 「わ、分かった! 今行く!」 グラニは——闘技場に向かって走り出した。 本戦の幕が——上がる。 ——次回へ続く