# 第10章 次男の構想 --- ## 期待 星々の光が床にこぼれる、ひどく広い間。 父は玉座から立ち上がり、大きく伸びをした。 「さて! 次だ!」 次男が飛び上がるように立ち上がった。目がきらきらと輝いている。楽しい匂いがすればいつだってこうだ。 「ぼくの番だ!」 「おお、待っていたぞ!」 父は少年のような笑みを浮かべ、手を叩いた。 「さあ、どんな世界を見せてくれる?」 --- ## 宣言 次男は胸を張り、両手を広げた。 「野菜の世界!」 一瞬の沈黙。 「……野菜?」 長女が眉をひそめる。 「野菜って……あの、食べる野菜?」 「そう! トマトとか! ニンジンとか! あとキャベツとか!」 長男は困惑した表情を浮かべた。 「派手なやつを用意すると言っていたが……」 「派手だよ! 見てよ、トマトは真っ赤だし、カボチャはでっかいし、ナスは紫だし!」 父が身を乗り出した。 「おお! 確かに派手だ!」 「でしょ!?」 末子がくすりと笑った。 「……なるほど。色という意味では確かに」 長女が少し考え込んでから、微笑んだ。 「でも……野菜の世界って、どんな物語になるのかしら。気になるわ」 長男も頷いた。 「確かに。私の世界は秩序の都市だったが……野菜には、どんなドラマがあるのだろう」 次男はにやりと笑った。 「それは見てのお楽しみ!」 末子が肩をすくめて笑った。 「楽しみですね。予想がつかない」 父は玉座で体を揺らしながら言った。 「よし! わたしも楽しみだ! 野菜の世界、見せてくれ!」 --- ## 準備 父はタキシード姿で胸を張った。 その姿は神々しいというより舞踏会に臨む紳士のようで、子どもたちは思わず目を丸くする。 「さあ、次男! 準備はいいか!」 父はウキウキとバラを胸元で揺らしながら言う。 次男は目をキラキラさせて頷いた。 「うん! もう全部できてる!」 「どんな世界が待っているのか、楽しみだな!」 「すっごい楽しいやつだよ! だって、楽しいは正義だから!」 父は満面の笑みで頷いた。 「いい言葉だ!」 --- ## 創造の詩(うた) 次男は一歩前に出て、両手を広げ、詠唱を始めた。 --- **「黎明のひかりよ やさしく舞いおりて 静寂の海に 芽吹きの鼓動を響かせよ 蒼き空よ 星を抱きしめ 遥かな未来を 清らかに奏でよ 揺らめく幻想は 街となり ひとつの秩序を やわらかに描く ──その名は、創造の詩(うた) Reiage(レイアージュ)!」** --- 詠唱が終わると同時に、父の間全体が温かな光に包まれた。 土の匂いがふわりと漂い、どこからか風が吹き抜ける。光が積み木のように組み上がり、瞬く間に緑の世界の姿を形作った。 畝が連なり、支柱がそびえ、葉っぱがさわさわと揺れる。 遠くで虫の羽音がして、空には太陽が輝いている。 「おおおっ! 出た! 緑緑だ!」 父は身を乗り出して手を叩き、少年のような笑顔を浮かべる。 長女は思わず手を合わせて「美しい……」と呟いた。長男は静かに頷き、末子は面白そうに世界の細部を観察していた。 --- ## 旅立ち 父は玉座から降りた。 「さて、わたしはどこかに紛れるぞ」 次男はきらきらした目で頷いた。 「うん! 父上がどこにいるか、ぼくも分かんないけど……きっと面白いところにいるよね!」 「そうとも! "類まれなる運命"だからな!」 父が手を上げ、全員で声を揃えた。 **「わたしは紛れる。おまえたちは見守る。終われば話す。」** 光が父を包み込み、その姿がゆっくりと消えていく。 次男は目をきらきらさせながら、自分の世界を見下ろした。 「さあ、始まるよ!」 --- **(第11章へつづく)**