# 第16章 脱水の審判 --- ## 静寂の後 水が完全に引いた。繊維は重く垂れ下がり、びしょ濡れだった。 「……終わった?」 「もう水は来ない?」 「たぶん」 「たぶんって言うな!!」 「じゃあ確実に来ない」 「急に自信満々になるな!!」 --- ## 生存確認 ムレ蔵が声をかけた。 「誰かいるか? 声出せ」 「……ここ」 「俺も……」 「俺も生きてる……」 繊維のあちこちから、弱々しい声が返ってくる。 「よし、思ったより生き残った」 「何人?」 「数えてない」 「数えろよ!!」 --- ## 安堵 ゲンキは深く息を吐いた。 「やった……俺たち、生き残った……」 「まだ油断するな」 ムレ蔵は警戒を解かなかった。 「でも今は静かじゃん」 「静かなほど怖いんだよ。経験上」 その時—— --- ## 回転 世界が、動き始めた。最初は、ゆるやかな揺れ。だがすぐに——加速した。 「えええええ!?」 世界がグルグルと回り始めた。さっきの渦とは比べものにならない速さで。 「何これ!!」 「回ってる!!」 「さっきと違う!! 水がない!!」 「乾いたまま回ってる!?」 遠心力が菌たちを壁に押しつけた。 --- ## 吹っ飛ぶ 「ぎゃあああ!!」 「飛んでる!! 俺飛んでる!!」 「しがみつけ!」 「何に!?」 「繊維! 繊維にしがみつけ!!」 「繊維も一緒に飛んでる!!」 「それでもしがみつけ!!」 菌たちはものすごい勢いで吹っ飛ばされていく。 --- ## モラクセラの苦悩 モラクセラは必死に繊維にしがみついていた。 「くっ……これは……ヤバい……!」 「王様もヤバいの!?」 「当たり前だろ!! 誰でもヤバいわこれ!!」 「王様の威厳は!?」 「威厳じゃ生き残れん!!」 --- ## ムレ蔵の限界 ムレ蔵は繊維の奥で踏ん張っていた。 「くそ……俺の経験則が……通用しねえ……!」 「おっさん! 何かコツある!?」 「ない!! こんなの初めてだ!!」 --- ## 大腸菌太郎の悟り 老人は——繊維の最深部で目を閉じていた。 「じいさん! 何かアドバイス!!」 「……耐えろ」 「それだけ!?」 「それしかない」 --- ## 停止 そして——突然、回転が止まった。世界が静止した。完全な静寂。 「……止まった」 「止まったよね……?」 ゲンキは繊維に張り付いたまま、ぐったりとしていた。 「生きてる……俺、生きてる……」 --- ## 歓喜 モラクセラが笑った。 「生き残った……!」 ゲンキは叫んだ。 「俺たちは勝ったんだ!!」 「我らは選ばれし者だ!!」 「王様うるさい!!」 大腸菌太郎が静かに目を開けた。 「……ここまで来れば……終わりじゃろう」 「じいさんもそう思う!?」 「たぶん」 「たぶんって言うな!!」 --- ## 勝利宣言 菌たちは繊維の上で寄り添った。 「長い戦いだった……」 「何分くらい?」 「知らん。体感で一生分」 「実際は多分30分くらいじゃな」 「30分!? 短!!」 ゲンキは繊維を見上げた。 「でも……生き残った。それだけで、十分だ」 彼らは——勝利を確信していた。 --- **(第17章へつづく)**