# 第18章 長女の審美 --- ## 休息 父は椅子に深く沈み込んでいた。 「……疲れた」 「お疲れ様です、父上。お茶をお持ちしましょうか」 「ああ……頼む」 次男が口を尖らせた。 「えー、もう次やらないの?」 「やらん」 「父上の大腸菌太郎、かっこよかったのに!」 「12時間で蒸発した老人のどこがかっこいいんだ」 「悟ってたじゃん!」 「悟る暇もなかったわ」 --- ## 反省会 長男が口を開いた。 「次男。今回の世界、激しすぎたのでは……」 「激しくて何が悪いの?」 末子が冷静に言った。 「体感時間10分。短すぎて何も分からないまま死にましたね」 「それがいいんだって!」 父が目を開けた。 「……次男。お前の世界は二度とやらん」 「えー!!」 --- ## 長女の番 長女がお茶を運んできた。父は茶を一口啜った。 「……で、次は長女の番か」 「はい」 次男が口を挟んだ。 「長女の世界ってどんなの?」 「さあ?」 「さあって……自分で作るんでしょ?」 「作りますけど、説明はしませんよ」 「えー、教えてよ!」 「嫌です。楽しみが減るでしょう」 末子が頷いた。 「確かに。次男の世界も事前に聞いてたら、『洗濯か……』ってなってましたね」 「洗濯バカにすんな!!」 --- ## 始まり 父は茶を飲み干した。 「……準備はいいか」 「はい」 次男がぶつぶつ言った。 「俺の世界より面白くなかったら笑うからね」 「笑えばいいと思いますよ」 長女は両手を広げた。 「では、父上。参りましょう。——レイアージュ」 世界が、白く染まった。 --- --- ## 終焉の戦場 目を開けると——そこは、地獄だった。 荒れ果てた大地。燃え盛る森。空を覆う黒煙。そして——目の前に、それはいた。 巨大な狼。毛並みはしなやかで、月光のように銀色に輝いている。だがその一本一本が——鋼鉄のように硬く、刃のように鋭い。 「……これが、ラスボスか」 自分の手を見る。傷だらけ。血まみれ。握っているのは——刃がボロボロになった大剣。 「隊長!」 振り向くと、仲間たちがいた。盾を構えた男。両手斧を持つ戦士。素手の拳闘士。槍を構えた女。全員が、ボロボロだった。 「……全員、生きてるな」 「なんとか」 「あの獣を倒せば……終わりだ」 拳闘士が苦笑した。 「倒せるかよ、あんなの」 「倒すしかない」 隊長は剣を構えた。「行くぞ——」 獣が、こちらを見た。金色の瞳が、獲物を捉える。 --- ## 一撃 盾使いが叫んだ。「俺が前に出る! お前らは——」 獣が動いた。一瞬だった。巨大な前足が振り下ろされる。盾が——砕けた。 鋼鉄の毛が、肉を裂く音。骨が折れる音。 盾使いは——声すら上げられなかった。地面に叩きつけられた体は、もう動かない。 「——ッ!!」 隊長は叫んだ。名を呼ぼうとした。 だが獣は、すでに次の獲物を見ていた。 --- **(第19章へつづく)**