# 第21章 王都炎上 --- ## 王都崩壊 王都は、堅牢な城塞都市だった。だが——夜明け直前、丘の向こうに銀色の影が現れた。 獣が跳んだ。城壁の上に着地した。それだけで石壁にひびが入る。 兵士たちが槍を向けた。矢が放たれた。すべてが、鋼鉄の毛に弾かれた。 獣は城壁の上を駆けた。走るだけで、毛が壁を削っていく。石が崩れ、兵士が落ちる。 --- ## 阿鼻叫喚 獣は城内に降り立った。商店街を駆け抜ける。屋台が吹き飛ぶ。石畳が砕ける。 兵士たちが立ちはだかる。剣を構え、盾を並べ、槍衾を作る。 獣は——止まらなかった。前足を振り下ろす。盾の列が砕ける。尾を薙ぎ払う。槍が折れ、兵士たちが吹き飛ぶ。 体当たりで建物の壁を貫通し、反対側に抜ける。第二の城壁に体をぶつけた。壁が傾ぐ。もう一度。壁が崩れた。 獣は王城の前に立った。炎に照らされて銀の毛が赤く輝いている。 --- ## 半壊 火の手が上がっていた。商業区は壊滅。兵舎は瓦礫の山。城壁は三重のうち二つが崩れた。 獣は城門の前で立ち止まり、口を開き、天に向かって吠えた。咆哮が王都の全域に響き渡った。 --- ## 到着 崩れた城壁の隙間から——四つの影が滑り込んだ。全員がボロボロだった。 目の前の光景に、全員が言葉を失った。 「……嘘だろ」 王都が——燃えていた。建物が倒壊し、煙が空を覆っている。 「遅かった……」 隊長が拳を握った。 「いや。まだ全部は壊れていない。あの獣を——止めなければ」 --- ## 獣の背中 瓦礫の街路を進むと——獣がいた。広場の中央で、背を向けて王城を見上げている。こちらには——気づいていない。 槍使いの女が言った。 「背中を向けている。槍を投げます」 「届くのか?」 「届きます。致命傷は無理です。でも——気づかせることはできる」 隊長は一瞬迷った。だが——このまま王都が壊されるのを見ているだけなら、何のために追ってきた。 「……やれ」 槍使いの女は深く息を吸った。全身の力を腕に込める。 「——ッ!!」 槍が飛んだ。一直線に獣の背後へ。 曲がった穂先が——獣の尾の付け根に突き刺さった。浅い。肉にわずかに食い込んだだけだ。 だが——獣は止まった。ゆっくりと振り返る。 金色の瞳が——瓦礫の影に潜む四人を捉えた。 「来る」 隊長が言った。獣の毛が——全身、逆立った。怒りだ。 「——来るぞッ!!」 獣が——跳んだ。 --- **(第22章へつづく)**